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未来の記憶

ある朝、俺は中学生になっていた。

とはいっても、めでたく小学生から中学生に進級したわけじゃない。

だって俺は３ヶ月前に三十路になったばかりだ。

意味がわからないかもしれないが、
この状況、一番意味がわからないのは
他でもない俺自身だ。

話を整理しよう。
昨日妻の理香と離婚する話をしていた。
離婚話は昨日、今日始まったことじゃない。
お互いの文化の違いを
お互いに認めあえないまま
気がつけば子供は小学生。

文化の違い。
それはそれはハタから見れば些細なことだ。

たとえば食事の時間に子供にジュースを飲ませるかどうか。
娘は小柄だ。
あまりメシが食えない。
俺は子供のころ食事中は水か麦茶しか出なかった。
と、いうか普段からあまりジュースなんか飲めなかった。
ジュースは甘い、腹にたまる。
食事中にジュースを飲めば少食の娘がさらに少食になるのは明白だった。
それで妻が娘の少食を悩んでなければ別に構わないと思う。
でも妻は悩んだ。
何故食べないか娘に問い詰める。

しかし、こんなことを言っていてはキリがない。
夫婦間の文化…価値観に正邪はないし、正しいと思うからこそ相手を正そうとし、結果喧嘩になる。
昔カウンセラーが喧嘩とは正しさの証明で起こるといっていた。
家族を崩壊させてまで正しさを証明する必要がないとわかっていても
結局お互いに譲りあうことは出来なかった。
とにかく、疲れて果ててしまったんだ。
責めるのも、責められるのも。
一昔前は怒りの感情もあった。
今はそれすらない。

あきらめ、というのだろうか。
脱力感が俺を支配していた。

だから…ひとつの結論として
離婚にたどり着いたんだ。