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結論が出てから、俺は寝床に入った。
スッキリはしてなかった。
妻もきっとそうだろう。
矛先を自分の母親に変え、まだ電話で話していた。
俺は昨晩ヤケクソぎみに眠ることに専念したんだ。
そして冒頭の事件は
それから間もなく起きた。
「一也!もう起きないと遅刻だよ!」
寝起きに入った第一声は妻の理香の声じゃなかった。
目を覚ますと見慣れない天井だった。
いや…
見慣れた、懐かしい天井だった。
記憶の中でカギをしていた引き出しが
何かの拍子にいっきに開いたような、
とんでもなく懐かしい天井だった。
俺は眠気をよそにガバッと身を起こした。
ここは…自分の家ではない。
実家だ。
いや、正確には「昔」の実家だ。
俺の昔の実家は駅前の団地で
7年前に団地を建て替えるとかで追い出され隣の市に越したのだ。
だから今、俺がいる場所は存在しない。
今じゃ駅前には、ちょっと高級そうなマンションが建ち並んでいるわけで。
俺を起こした声の主は母親だった。
見ると、母親が若い…。
しらががない!
「お兄ちゃん、起きるの遅いね」
い、妹が幼い!
今の妹は金だの茶だのの髪の色だが、おかっぱ風で色もクログロしている。
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