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試験の前になると、三枝はいつも佐和子のノートをコピーさせてもらい、試験に備えていた。
きれいな文字で丁寧に書かれた佐和子のノートはとても見やすく、数学嫌いの三枝が、毎回赤点をギリギリで免れることができるのは、佐和子のノートのお陰だと言える。
三枝がノートを借りるようになってから、佐和子のノートには要点などがますます丁寧に書き込まれるようになっていた。
佐和子はなにも言わないが、たぶんそれは、数学が苦手な自分にも解りやすくするためなのだろうと、三枝は佐和子に感謝していた。
そんなわけで、窓際の一番後ろの席という絶好のポジションに位置し、他の授業時間なら気兼ねすることなく机の上に突っ伏して居眠りしている三枝も、数学の時間だけは我慢しているのだ。
起きているのなら授業を聞けばいいと思うかも知れないが、生徒たちを振り返ることなく、始まりから終わりまでを黒板に向かったまま小声でぼそぼそと進める数学教師の独りよがりの授業を、三枝は、やはり受ける気にはなれなかった。
──みんな、よくこんなつまらない授業を受けられるもんだな……。
あくびをしたために出てきた涙を指で拭いながら、三枝は隣の佐和子に視線を向けた。
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