願い事、本当の幸せ

4/6
前へ
/18ページ
次へ
そうだ、あの子に願いを聞いてもらおう。 たった一回の願い事。 俺は、あの女の子を必死で思い出しながら、頭の中で何度も呼ぶ。 病室に誰もいなくなった時、やっと女の子は現れた。 「願い事は決まった?」 女の子は聞く。 迷わず、俺は答えた。 「妻と子供を、助けてくれ」 願い事は言った。 しかし、女の子は、少し困ったように言う。 「ダメよ」 何でも、と言ったのに、何故? 「何でだよ」 怒り口調で聞くと、 「だって、一人助けるのが一つの願いに換算されるのよ?」 当たり前でしょ、とでも言いたげに女の子は言った。 そして続ける。 「だから、助けられるのは奥さんか子供さんだけってこと。」 「そんな…………」 言葉が出なかった。 どちらかなんて選べなかった。 困り果てている俺に、女の子は一言、話し掛ける。 「貴方は生きたいの?」 生きたい?そりゃ、まだ死にたくは………… あぁでも、俺が死んで代わりに二人を助けられるなら…………? でも、それだと彼女の負担が大きくなる。 どうすれば…………。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加