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そうだ、あの子に願いを聞いてもらおう。
たった一回の願い事。
俺は、あの女の子を必死で思い出しながら、頭の中で何度も呼ぶ。
病室に誰もいなくなった時、やっと女の子は現れた。
「願い事は決まった?」
女の子は聞く。
迷わず、俺は答えた。
「妻と子供を、助けてくれ」
願い事は言った。
しかし、女の子は、少し困ったように言う。
「ダメよ」
何でも、と言ったのに、何故?
「何でだよ」
怒り口調で聞くと、
「だって、一人助けるのが一つの願いに換算されるのよ?」
当たり前でしょ、とでも言いたげに女の子は言った。
そして続ける。
「だから、助けられるのは奥さんか子供さんだけってこと。」
「そんな…………」
言葉が出なかった。
どちらかなんて選べなかった。
困り果てている俺に、女の子は一言、話し掛ける。
「貴方は生きたいの?」
生きたい?そりゃ、まだ死にたくは…………
あぁでも、俺が死んで代わりに二人を助けられるなら…………?
でも、それだと彼女の負担が大きくなる。
どうすれば…………。
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