この愛は…誰にも止められない

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すると、皆にコーヒーを配った小太りの女性社員が。 「本当にいないみたいよ。 ま、離婚して疲れたって言ってたわ」 と、私の素直な気持ちを代弁してくれた。 「でも、顔よし、体よし、頭よし、もう別に男いてもいい気するぜ。 なんか、もったいない…俺じゃ~、駄目かな?」 すると、眼鏡を掛けたインテリ然とした男性社員が。 「お前にやるくらいなら、俺が貰う」 不毛な男性社員の無駄話に、 「おいおい、先輩は、お前達のモノじゃないわよ。 アホんダラー共」 と、小太りの女子社員の突っ込みで、話は終わった…。 その頃。 私は、そのままの足で、ヒルズの映画館に行った。 そこが、待ち合わせ場所だったからだ。 昨日、今日の待ち合わせについて電話したら、中々な美声の若者らしき従姉弟と来たら、援助のことをすごく遠慮してて、電話の向こうで謝られた。 益々興味を惹かれた私で在りっ。 とにかく、従姉弟だし顔くらいは合わせようと、オバサン臭い説教じみた言い方してしまったのは事実。 正直、言った後に自分で、 (私…もうオバサンかしら) なんて考えもしてしまったくらいだ。 だけど、もし今日。 此処で彼に出会わなかったら…。 この先私は、本当の愛に一生掛かっても出会えたか解らない。 映画館の在る別館の手前の所で、私は彼を見つけた。 (ん? あれか~?) カップルや若い子たちが行きかう中で、映画館と美術館の間の通りに、少し人の流れから外れて立っている男の子が居た。 (髪が長いな~、ヲタクみたいだわ。 父さんの言う通り、私のパンチで泣きそうだなこりゃ) その立って居る彼の体の線は細く、身長はやや高い。 だか、今風の男の子らしさは見当たらなく、優等生がそのまんまのように見えた。 だが…、私が近づこうとした時だ。 サラッと強い風が吹く。 (う゛っ、寒い) 私がコートを寄せ、しっかり身を包むのと同時に、彼の髪がフワッと乱れた。 (え?) 私は、正直に年甲斐もなくドキっとした。 風で乱れた髪の先に見えたのは、びっくりするくらいの美少年だ。 鼻辺りまで被っていた髪が、全部乱れて、初めて見える。 私は、自然に体が動いていた。 いや、誰よりも早く、彼に声をかけたくなっていたのかもしれない。
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