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「よ、こんにちわ」
2時過ぎの陽が眩しく、白い通りのタイルが綺麗に見える。
それにしても、じゃ。 美少年に対して、“よっ”って…。 緊張してか、年下にどう声かけていいか解らずに、オッサン染みた言い草をしものだ。 私のバカ…。
だが少年は、緊張した面持ちで、頭を下げてきた。
「初めまして、御繰 彰檎(みくる しょうご)といいます」
「こちらこそ、初めまして。 樋川 杏子よ」
「きょうこ……さん。 従姉弟…なんですよね?」
彰檎君を見る限り、声掛けて引かれた様子は無かった。 寧ろ、初めての親戚相手で緊張している顔だ。
「そうだぞ~、オバサンいうなよ」
私が笑って言うと、彰檎君もこわばりつつ笑った。
たじろぐ姿までか…、可愛い。
二人してヒルズから出て、近くのお寺に入った。 込み入った事を話すのにも、静かな方がいいということで…
私は、白いコート姿。 彰檎君は、ハーフコートに黒いジーンズだ。 見てからに年の少し離れた姉弟である。
砂利のひかれた敷地内で、二人して歩く。
「…そっか~。 お母さんは、後生は君の為だけに生きたんだね~」
「はい…、僕が大学に行かないって言うと泣くから・・、進学選びました。 でも、もう母はいませんし、大学行く意味無い気がしてます…。 働いてそれなりに生きれればいいとしか、今は…」
私から見ても、やはりお母さんを亡くしたショックが大きいようであった。 だが、私は彼の言う中途半端な生き方は賛成出来ないと。
「それでいいのか~? お母さんは、君に羽ばたいて貰いたいから進学勧めたんでしょうに。 お母さん居なくなったら、もうどうでもいいんじゃ~お母さん浮ばれないわ」
「でも、もうお金ないです…。 今居るアパートだって、1月には家賃切れるし、働かないと…、進学どころじゃないです」
「ふむ、リアルな話ね」
「はい」
「よし、お姉さんがなんとかしよう」
私は、彰檎君を見てきっぱり言った。
正直な気持ちで、この子なら大丈夫だと思った。 今、こうして逢って、軽い男性恐怖症の私だが、嫌だと思わない。 本当に、不思議と嫌じゃ無かった。
「あ…いえいえっ、それは困りますっ!!」
彰檎君は、激しく首を振って否定する。 彼なら、こう言うのは理解出来た。 感じれる程に、真っ直ぐな子だから。
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