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私は、彼が受け入れ易い提案をこの時に思い付く。
「どうして? それに、只でしてあげるなんて言わないぞ。 こっちも面倒見てあげる代わりに、それなりの条件は出すわ」
「じょ…条件ですか?。 自分に出来る事ですか?」
この一言を聞いて、私は微笑んで頷いて見せる。
「うむ」
私は、静かな境内で、少し身構えた彰檎君と対峙した。
「一つ、大学院は別に、大学は4年で卒業すること。 一つ、家事は交代制でやること。 一つ、学業を怠らずに、上を目指す事。 一つ、私を大切にする事。 以上、です。 どうだ、出来るかい若者よ」
すると彰檎君は、立ち尽くしたまま横を向く。
「解りません…」
「ん?」
「母が言ってました。 自分は、実のお兄さんに迷惑ばかり掛けて嫌われていると…。 もう、誰も頼れないと…。 ですが、杏子さんは………。 杏子さんは、母のお兄さんの子なのに、僕にそんなことをする理由がわかりません」
彰檎君に言われ、その事を思い出す私だった。 でも、彰檎君から聞く叔母さんは、父さんの言う叔母さんとは食い違っている。 その理由の殆どは解らないが、変わった原因は解る。
だから…。
「ふふ~ん、ま~そうね。 でも、お母さんはお母さんで、君は君でしょ?。 ま、確かに、叔母さんのことは、父さんから聞いてたけどね。 君見てると、父さんの言ってたことが丸々本当でもないな~って思うし。 一応、血の繋がってる従姉弟じゃない。 こんな地元から離れた東京で逢ったのも、何かの縁だしょうに」
彰檎君は、少し困りながら。
「はぁ、そうかも知れませんね」
「アタシも女だから、お母さんの気持ちが少し解る気がする。 応援するから、頑張ってみてもいいんじゃないの?」
私の前で、彰檎君は悩んでいた。 私を警戒していたのかもしれないし、まだ母親の死のショックもあっただろう。
でも、その日は考えるために別れたが、3日後にもう一度会うと、素直に了承してくれた。
これが、二人の出会いで在る。
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