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【そらにとけてしまいたいんだ】
「俺っちは死んだらどうなるんだろう」
何故か俺の家に来てこたつに入り、共に鍋をつつきながら横に座っている鬼蜘蛛はそう呟いた。
またか、と溜め息を吐き鬼蜘蛛の顔を見る。こいつは稀に酷く死にたがりになる。
しかし予想に反して鬼蜘蛛の目には光が宿ったままだ。以前までのように目が濁っていない。
「…いきなりだなァ、鬼蜘蛛。どうしたってんだよ」
「うーん、いや、ね」
動かしていた手を止めこたつに突っ伏す。
「俺っちはたくさん殺したでしょ、死んだらどこに行くのかなぁ、って」
「さァな、俺は死んだことねェからわかんねェ。俺の兄貴と同じとこに行くんじゃねェか?」
そう言うと鬼蜘蛛はまたうーんと唸る。
「でもダガーキルは良い人だったじゃないってハナシ。だから同じとこにはいけないよ、きっと」
「で、なんで急にそんな話したわけ?死にてェの?」
「…どうだろ。そんなことはない、と思うけど。ただ…生きても迷惑なだけでしょ。…あ、でも、もし死に方とか死後とか決められるんなら…」
鬼蜘蛛はこちらを見て酷く優しい笑みを浮かべた。
「そらにとけてしまいたいんだ」
みなをずっと見守れるように。
そう言った鬼蜘蛛に俺は「そうか」とだけ呟き、傍らにあったビールを飲む。
こいつもずいぶん変わったものだと一人ひっそりと笑みを浮かべた。
(幕)
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