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【死を与えるのは立場が上の者の役目で故に私は死なないのです。】
「あ」
と、言い終わる前に俺が放った弾が相手の脳天に突き刺さる。血やら何やらの液体を額に開いた穴から垂れ流しながら倒れると何度か痙攣し、そのまま動かなくなった。
「…あん?死んじまったかぁ?」
声をかけるが当然反応はない。動かなくなった奴の近くに屈み相手の顔を見る。脳天のど真ん中に穴が開き、空中を見つめたまま事切れている。
その顔には恐怖と反抗の色が混ざり合って苦痛に歪んでいた。
「今回は遊ぼうと思ってたのによォ…」
ちぃっと舌打ちをして銃を確認する。減ったのはたったの三発だ。
事切れた男は俺をこの場所まで案内した男だ。この博物館の警備員の一人らしい。
握らせた金は約二十万。それだけでホイホイ宝石の所まで案内し、そして命を散らした。
「余計なこと言うからだってぇの」
もう動かない相手に銃口を向け、引き金を引く。
ばぁん、と音が鳴ってまた一つ穴が増えた。しかし反応はない。ただ穴が開いて液体を流すだけだ。
「面白くねぇ」
心の中にある黒い感情がぐるぐると渦巻く。
先ほど男が言った言葉が脳裏に蘇った。
右の手のひらと左肩から血を流し、青い制服を赤で汚しながら、苦痛で顔を歪めながらこちらを睨みつけ言った言葉。
『お前はろくな死に方しないだろうな!死刑になればいい…楽に死ねると思うなよ最低野郎ッ!!!』
ばぁん、とまた銃声が鳴る。その音で現実に意識を引き戻された。先ほど男の命を散らせた時と同じように無意識に銃を脳天に合わせ引き金を引いてしまったらしい。
「面白くねぇ…」
そう呟いて腰のホルダーに銃をしまう。
恐らくだが『最低野郎』の部分に反応したわけじゃないのだろう。俺が反応したのは『死刑になる』といった部分だ。
「俺が死ぬときは俺が死ぬと決めた時だけなんだよ、ばぁか」
べ、と相手に向かい舌を出す。こいつは何もわかっちゃいなかった。
誰かに殺される、ということは自分より上に立たれるという事だ。それは許されない。なぜなら世界で一番上に立っているのは自分だから。世界で自分より優れた者も居なければ自分より偉い者もいないのだ。だから自分が殺されるなんて有り得ない。
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