八月十四日

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あの出来事が夢であることの確証が欲しくて、急ぎ足で公園に向かった。 蝉の声がみんみんと響き渡る中を、汗をかきながら公園までの道を急ぐ。 みくがいた。夢と同じ場所に。 「……隣いい?」 「いいですよ」 全く同じ挙動、全く同じ会話だった。 この後お互いに名前を告げ、夏について感想を言い合う。 そして黒猫がやってくる。 みくが猫を抱き上げると、黒猫は夢と同じように僕を見つめ、またするりとみくの下を離れて歩き出した。 「あっ」 みくが黒猫を追いかけて歩き出す。とっさに僕はその腕をつかんだ。 「……あ」 何を言おうか迷った。 初対面なのに急に腕をつかんでおいて、上手いことを言える気がしない。 まさか、そのまま進んだら君が死ぬから、なんて言えるわけがない。
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