八月十五日

4/7
前へ
/14ページ
次へ
「あなた、名前は?」 ふと、彼女から質問が飛んできた。 僕は段々とこぐ勢いを増していき、高度を上げていく。 「とうま」 一番高い位置に到達したところで満足し、勢いを抑えていく。 「君は?」 「みく」 間髪入れずに返事がきた。 「とうま君は夏が好き?」 また唐突に質問がきた。 僕はみくと同じ高さになった。 「……好きでも嫌いでもないけど」 ちょっとだけ考えてみたが、僕には特に好きな季節も嫌いな季節もなかった。 「そっか。私は嫌いだな、こんな暑いの。虫も多いし」 みくはふてぶてしく呟いた。 にゃーん。 黒猫がみくの足元に寄ってくる。 一体どこから現れたのか。 「よーしよし、おいでー」 みくが手を差し出すと、黒猫は真っ直ぐにみくを目指してやってきた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加