八月十五日

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「よくなついてるね」 「そうかな、餌をくれると思ってるのかもしれない」 ブランコから降り、みくは猫の頭を優しく撫でる。 猫は抵抗することもなく身体を預けている。 「名前はないの?」 僕もブランコから降りて、みくの傍に寄っていく。 「ううん、付けてない。この子昨日会ったばかりなの」 薄い笑みを浮かべ、今度は猫を抱きかかえる。 「可愛いね」 素直に感想を口にした。 「でしょ?」 今度は満面の笑みで言う。 黒猫の方を見ると、猫の眼はじっと僕を捉えている気がして少し寒気がした。 このまま見続けたら取り込まれてしまいそうな眼だ。 突然だった。 黒猫はするっとみくの手から抜け出し、公園の外へすたすたと歩き出した。 「あっ」
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