八月十五日

6/7
前へ
/14ページ
次へ
みくも猫につられて走り出す。僕もその後ろに続く。 「猫ちゃん、そっちは危ないよ!」 猫は迷うことなく真っ直ぐ歩いていく。 まるでついてこいと言うかのように。 みくが猫に追いついた。 猫を拾い上げようとしたその時、 ばっと通ったトラックが彼女をさらった。 僕の視界は赤く染まった。 トラックが彼女の身体を引き摺り鳴き叫ぶ。 返り血を浴びる横断歩道、赤の歩行者信号機、トラック、 そして僕。 血飛沫が僕の顔にかかり、彼女の香りと混じってむせ返る。 嘘みたいな一瞬の出来事だった。 信じたくなくて、助けを求めようと辺りを見渡す。 何かがいた。 陽炎? 目を凝らしてその影を見た僕は背筋が凍った。 「僕」だった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加