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暑い日差しが、ボロボロな衣服を濡らしていく。
「姫様、鍬の扱いにも馴れてきましたのう」
「ええ、そうね、爺様、この畑には何を植えるのですか?」
「ここにはジャガイモを植えるんじゃ、知っとるかいのう」
「し、知ってるよ!そんなの、常識ですもの!」
私はあれから、父上に頭を下げ、私の夫婦だったあのお方を養子にし、私を農民にして下さいと頼んだ。
確かに、辛く、か細い生活だったが、そこに冷たいものは何も無かった。
時折降る雨も、今では農作物が育つために嬉しく感じた。
「姫様!泥がお顔に付着しております!!早急に落とさねば!!」
「ああ!邪魔よ側近!せっかく耕したのに、あんたの足で固めてどうする!!」
ちなみに、手紙を渡していた側近も道連れである。
しかし、また側近も、笑顔が多く見られた気がした。
たまに、元夫婦のあのお方も、畑に来てくれた。
私に向かって「愛してるよ」と言うが、私は見向きもしなかった。
やがてあのお方も鍬を持ち、鎌を持ち、さらに父上を落胆させた。
ある日、父上が畑に訪れた。
父上は泥だらけの私を見下して言った。
「ふん、汚らわしい!貴様など捨てて正解だ!……だが、昔よりよく笑っておるの…」
その言葉に驚いた私は、父上を見た。しかし、父上は背中を見せていた。
父上の背中が少し震えていたのは、気のせいだろうか。
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