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ポツポツ、と降り出した雨。私が一言「お外を散歩したいわ」と言うと、キツキツのコルセットを装着するのに何分もかけ、側近が私を誘導する。
この日は街から少し離れた農村地帯に足を運んだ。この街は、商業もさることながら、農業をも兼ね備えている、まるで一つの国のような街だ。
だが、身分差別が激しい。農民は商民の下であり、農村地帯で生まれた人間は皆差別される。
両親はいつも私にこう言っていた「農村地帯の人間には近づくなよ?汚れてしまう」
耳にタコが出来そうだった。
正直、私は両親が嫌いだ。農民も商民も、皆人間ではないか、何故そこに差別が生まれるのだ。
「た、助けてください!」
農村地帯を歩いていると、突然一人の男が、四つん這いで私のドレスを掴み、切羽詰まった表情で私を見上げた。
「姫君から離れろ!ドレスに泥がつくではないか!」
側近の一人が、男に言った。
男は私から引き離され、側近が私を囲んだ。
そんな中、私は周りを囲む側近に言い放った。
「どきなさい!欲がこびり付くわ!」
誰もが私を見つめた。いい気分だった。
皆に注目されたからではない、初めて自分の言いたいことが言えたからだ。
私は側近から傘を奪い取り、雨が降る中地面に倒れている男の側にしゃがんだ。
「大丈夫?」
「あ、ああ!はい!!」
彼は初め、私の顔を真正面から見てはくれなかった。何故かと尋ねると彼は言った「あなた様が眩し過ぎたからです」と。
これが、彼との出会いだった。
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