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私はその後、行く手を阻む側近達を押しのけ、彼の手を取って歩み出した。
「どうしたの?」
彼は私の顔を見てくれない。その時は何故だろうと思った。
「その…実は」
「ちょっと待った!あなたのお家で話を聞くわ?いいでしょ?」
そうは言っても、お姫様の言うことは絶対だ。だれも逆らってはならない。
よって彼も「待って下さい!そんな滅相もございません!」
などと断っているものの、彼の半分の力も無い私にこうやって引きずられているのだ。
「さて、あなたの家はどこかしら?」
彼がいた畑を沿って真っ直ぐ行くと、そこには緩やかな山のようなでっぱりがあり、そこから下に見える集落を一望出来る。
私はそこで景色を眺めながら、嫌がる彼に叱るように聞いた。
「もう!ぐだぐだ言ってないで、あなたの家はどこにあるのか教えなさい!」
すると彼は、悪魔にでも話すかのように声を震わせた。
「…ま、街の中です…」
「え…だってあなた農民じゃ?」
「農民でも…街に住んでる人は沢山います……そんなこともしらないで…」
彼は、そんなこともしらないで、という部分を小声で言った。
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