ガーベラの街

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「ごめんなさい!!私、あまり外に出られなくて、みんなのこと知らなくて…」 気づけば私は、彼に頭を下げていた。 後ろで結んだ髪の束が、耳の横で垂れる。 コルセットのため、お腹が痛い。あまり頭も下げられなかった。 「や、やめてください!頭をお上げ下さい!僕は別に……そんなんじゃ」 「ごめんなさい…」 しばらく彼は何も言わず、立ち尽くしていた。 彼の足が見える。ボロボロな裾が破けている黒いズボン。編み目が今にもちぎれそうな下駄。 そんな光景を見ていると、涙がこぼれた。 その雫は彼の素足に当たって弾けた。 彼は言った。 「何故…泣いておられるのですか?」 「よく、私が涙を流したと分かりましたね?不思議です。」 私は未だに彼の足を見ていた。 「それは、冷たい雨の雫が足に弾ける中、一粒だけ、暖かい雫が弾けたのです‥それはあなたの涙じゃありませんか?」 私は顔を上げた。彼は景色を眺めていた。 初めて横顔を見たが、泥まみれだった。雨がその頬を流れても尚、彼の頬には泥がこびりついている。 そんな頬を、私はいつも持参しているハンカチで優しく撫でた。 すると彼は、驚いて私の顔をまじまじと見つめてしまった。 今度は顔をそらさず、真面目から私の顔を見つめたのだ。 「姫…よろしいのですか?こんな農民の汚れた肌にそんなものを当てて…」 「あなたの肌は汚れてなんかいない、肌も体も心も綺麗な男の人…」 「………あ、あなた様も……綺麗なお方だ」 何故か私が俯いてしまった。 今までは彼を直視出来ていたのに、不思議だ。
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