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彼の家に着くと、私は思った。
今にも崩れそうなレンガの家…本当に大丈夫なんだろうか
と、しかし、私の身だけを心配してのことではない。
私はこの時にはもう、彼に惹かれていたのだ。
「ガーベラ、綺麗でしょ?僕が育てたんだよ…」
「これが、ガーベラ…綺麗ね、散歩には本当にたまに出ているけど、間近で見たのは初めてだわ‥」
私が一本のガーベラの側でしゃがんだ瞬間、彼の家のドアが開いた。
「ほら、開いたよ‥入って……あっ、気づけばお姫様にこんな口…すいません!」
「いいのよ、敬語なんて…」
そう言ったが、それ以来彼と、同じ距離で話したことは無かった。
「それで話って?助けてくれって何を?」
傘をたたみ、レンガ造りの玄関に寄りかからせた。
先端から水が流れてきて、私の靴を濡らした。
家に上がると、部屋は一個しかなく、隅には古びた調理場と、真ん中に大きめの机が一つ佇んでいるだけだった。
「いえ…なんでもありませんよ…」
何故私はその時、もっと食い付いて行かなかったのだろう。彼の突然の笑顔に魅了され、それどころではなかったとでも言うのだろうか。
「あ、明日も来ますから…は、ハーブティーを用意しておきなさい!」
「はいはい、もう帰られるんですか?分かりました、明日ですね?」
私は、彼の笑顔に負けたと言うのか…
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