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次の日、私は父の外出禁止令を無視して、彼の家に訪れていた。
ドアをノックした人物が私だと知ると、嬉しそうな顔をした反面、そこにはまだ少し、気まずそうな雰囲気があった。
「ハーブティーは、用意してくれたかしら?」
「すみません、僕の家は貧乏ですから、そんな代物…」
「そう言うと思って、私がティーパックを持ってきたわ」
「ティーパック?すみません、僕にはそんな代物…」
彼は私が持参したティーパックをまじまじと見つめ、それを見つめる私に気づいたのか、恥ずかしそうに顔を背けた。
「飲みましょ?お湯は沸かしたのですか?」
「い、いえ!姫様!そんなこと僕が致します!」
そんな彼の言い分を無視し、私は古ぼけた鍋に水を張った。
「コンロは無いのかしら?」
「すみません、僕の家はまだ行き届いておりません…あの積み上げられたレンガとレンガに鍋を置き、その間から薪に火をつけてお湯を…ああ僕がやります!」
「いいから黙ってなさい!…姫だって…そんなことぐらい知ってます!あなた昨日言いましたよね?農民だって街に住んでる人は沢山いる、そんなこともしらないでって」
「確かにおっしゃいましたが、決して姫様を愚弄したつもりでは」
「いいの!…いいのよ、私は愚弄されて当然ですから」
それ以上彼は何も言わなかった。
自分がお湯を沸かすために駆け出した足も、もうその時には止まっていた。
マッチに火が点り、やがて薪に火が移る。
その光景を見て、肩が上がっていた彼も、安堵して肩を落とした。
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