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「今日はいい天気だね。海にでも行こうか」
「馬鹿にしないで！」
パシャッ！と水の弾ける音がした。
彼女のコップの中の水が、私の顔面中央に勢いよくぶちまけられたからだ。
不幸中の幸いか、天気がよかったおかげで、氷はほとんど溶けていた。
年寄りに冷や水とは、まさにこの事じゃないか。
いつの間に、こんな嬉しくない言葉が当てはまる程に年齢を重ねていたのだろう。
好きで年を取るんじゃないって、本当だったんだな。
せめて三十代で老化が止まって、一生を過ごせないものだろうか。
ん？……これちょっと、鼻の中に水が入ったか？
こんな時は、高い鼻も良し悪しだと、毎回思う。
君ね、少しは配慮して、下からじゃなくて上からぶっ掛けてくれればいいのに……
「って……あれ？」
目を開けたまま考えごとをするのは子供の頃からの癖で、意識が戻った時に目の前の状況が変わっていた、なんていうことはよくある。
そうして今も、ふと現実に意識が戻ってみれば、疲れた女は消えていた。
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