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「ねえ、ジュリー」
「なんだい?」
「別に年下がダメってことじゃないんでしょ?」
「そうね」
「じゃあ、これから別の所に行かない?」
「別の所?」
「分かってるくせに……ダメ?」
「あー……そうだなー、もう少し熟れて食べ頃になったらね」
「何よそれ」
「完熟したのが好みなの」
「そんなにいつまでも売れ残ってません!」
「そうね。いい恋しなさいよ」
「じゃあね」
そう言って立ち去った後ろ姿は、くびれた腰に細い足。拗ねた顔しても可愛いから、もう少し熟れてくれればいいんだけど。
けれど性格はほとんど変わらないから。
子猫みたいな可愛さもいいけど、元気すぎて恋をする気にはならない。
大人になって、気品高くすました猫が、ふと気まぐれにじゃれてくる方が、趣もあるし愛着も湧く。
そんな温度と湿度がないと、なかなか恋に手を伸ばす気にはならない。
まあ別に、遮二無二恋をしていなくてもいいんだけど。
恋なんて、そこに花が咲いていて、ふと目を奪われるかのように自然に始まればいい。
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