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「さてと氷川君、ブラックルシアンでも飲もうかな」
「かしこまりました」
目の前で物静かに微笑む優男は、この店のバーテン君。
長身で長い足、これで馬にでも乗ってればまるで貴公子だ。
背面の棚にあるオールド・ファッションド・グラスを取るのにこちらに背を向けると、腰の位置は高く、その下には引き締まった小尻。
「相変わらずいい小尻だね」
「ありがとうございます」
「モテて仕方ないでしょ?あちこちで」
「そうでもありませんよ」
「謙遜も、君が言うと嫌味に聞こえるね」
「樹里さんほどナルシストになれたらいいんですが」
「言ったもん勝ちだよ、ナルシストなんて」
冗談の極みのナルシスト業を営んで久しいと、ナルシストも板についてしまって、何が冗談で何が本気なのか、自分でももう分からない。
渡されたグラスの中ではステアされても比重の重いカルーアが若干底に溜まっていて、ウォッカとのグラデーションが美しいと思う。
甘いのにアルコール度数は高くて、手っ取り早く酔いたい時には丁度いい。
「樹里、糖尿になるわよ」
「朝子、ママなのに客が飲む気喪失するようなこと言わないの」
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