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「やっぱりいい女だね朝子は」
「なぁに?急に。何も出ないわよ」
「鑑賞用にしておきたくて口説けもしないよ」
滲み出てしまう美しさはまるで、咲いた花が香りを留めておけないのと同じで、放っておいても蝶を誘き寄せる。
若い頃から浮き名を流しているけれど、それは何も過去のことじゃない。
滴るような色香は今もってなお健在で、その瞳だろうが胸元だろうが吸い込まれてしまいそうになるし、形のいい唇にも、白く細いうなじにも、すぐにでも吸い付いてしまいたくなる。
くびれた腰から盛り上がったヒップラインなんか、むしゃぶりつきたくなる輩も少なくはないだろう。
こんないい女はそうそういるもんじゃない。
「朝子はいつまで独りでいるつもりなの?」
「それは分からないわね。あたしだって、好きで独りじゃないのよ。いいご縁があればいつでも、と思ってるのにずっと独りなんだから。何故なのかこっちが聞きたいわ」
これだけの女だと、おいそれとは相手も見つからないのも頷ける。
「どんな相手なのかね、朝子を手に入れるなんて不届き者は」
そう言いながら思わず深く吸い込んでしまった煙草の煙を、ため息と共に吐き出した。
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