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「大袈裟ね。この歳なのにそんな勿体つけた言い方、おかしいでしょ」
「ちょっとやそっとじゃいないような、こんないい女に年齢なんて関係ないさ」
「確かに同感です。どうぞ」
結局は氷川君にお任せでオーダーした朝子には、アルコール度数低めのブラーバックが出された。
朝子ご自慢の自家製ジンジャエールで作ったブラーバックは一段と香り高く、ジンジャーのピリッとした刺激も楽しめる。
何にせよ、他にはないジンジャエールを使ったカクテルは、この店で不動の人気だ。これ飲みたさに店を訪れる常連客もいる。
どこの世界でもいい女というものは、胃袋を掴み、舌を酔わせるものらしい。
しかし、朝子は気づいているのかね。この随分と年下の優男の視線が、それらしき熱を帯びているのを。
まあ、人の恋路に首を突っ込むことほど野暮なことはないし、ほっといても成るように成るものだけれど。
「朝子が売れたらその時は、相手に一発、お見舞いさせてもらいたいね」
「何?馬鹿なこと言って。あたしのことはいいのよ。それより樹里よ。相変わらず長続きしないわね」
「そんなの相手に言ってよ。こっちはいつもフラれてしまうんでね」
「そうやって悪びれもせずに、笑顔で別れた話をできるのがおかしいのよ。相手に情があったとは思えないわ」
「恋に情はいらないじゃない」
「まー呆れた。愛情ってものはないの?」
「だって愛と恋とは別物。いくら綺麗でも花は愛さない」
「樹里にとっては、花も人間も同列なの?」
「美しさに目を引かれるのは備わってる本能だもの」
「そんなこと言ってちゃ誰とも上手くいかないでしょ?」
「先のことは分からないさ。世の中には変わり者もいるしね」
蓼食う虫も好き好き、この諺に一体どれだけの人間が望みをかけてきたことだろう。
そんな人間が一人、この空の片隅で酒を飲んでくだを巻いておるところでござるよ。
「樹里にはどんな人がいいのかしらね」
「まー、あれだな。理想は与謝野晶子と鉄幹だとか、ジョン・レノンとオノヨーコみたいな恋愛かな」
「ますます分からないわ」
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