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地面に着地したら、扉を開き和紗くんに覆い被さるようにして気絶した金髪野郎を雑に引っぺがし、その辺に転がしておく。ゴトって音がしたけど知らんぷり。きっとコイツは、なまはげすらも怖くて気絶するような怖がりなんだろうな。ざまァみやがれってんだ。
うちの可愛い親衛隊員を…泣かせやがって。
「あ、ありがとうございます…!」
ジャージは脱がされ、シャツも殆ど意味をなしていない状態だが下はズボンが脱がされそうになっているぐらいで、最悪の事態にはなってない。けれど、そうではない
目に涙を溜めて、身体が震えている姿を見て無事とは言えない。必死に感謝を伝えているけれど、今にも崩れ落ちそうだった。酷く、ひどく、許せない気持ちが沸いてきて、怒りに身を任せてしまいそうになる。
「あ………」
違う。ダメだ、今は。和紗くんは俺の雰囲気が変わったのを感じ取ってビクリと震えているのが見えた。更に怯えさせてどうするんだ浦瀬夕!
その前に草を脱ごう。この姿にはあまり恐れてはいないようだけど、元々脱ぐ予定だったしね。
ばさりと草がトイレの床に落ちていく。まるで絨毯のように見えるそれは緑、草と時々枝。脱皮したかのような解放感。
軽くジャージについた草をはたき落として。ふぅ…と息を吐く。
「やっ、ぱり…浦瀬さま…」
『ん?気付いてたの?ああ、それより、ほら…怖かったね。大丈夫、もう大丈夫…和紗くん我慢しないで』
ぺたりと座る和紗くんの目線に合わせてしゃがみ込み、シャツとジャージを整えてあげてから、よしよしと頭を撫で背中をポンポンと優しく接する。シャワー浴びせた方がいいよなあ、いやその前に保健室かな?見回りに連絡か…兎に角、1人には出来ない。また襲われたらと思うとゾッとする。
怖かったね、大丈夫だよと何度か声かけをしていると
「う…うっ…ひぐっ、う…うわあああん…!うらせ、さま、浦瀬さまあ…こわか、怖かった…ゔゔ…!」
『うん、うん…もっと早く来れれば、和紗くんにこんな思いさせなくて済んだのにね、ごめん、ごめんね…よしよし』
「ゔ、うら゛せざまは悪く、ないですッ…!たすけてくれたっ、浦瀬さまは助けてくれた…!それは僕が、ぼく…が弱いから…!ひぐっ」
我慢していたのだろう、大粒の涙をぼろぼろと流しながら縋り付く和紗くんを優しく抱き締めてあげる。もっと早く助けてあげられたら…と苦虫を噛み潰したような顔になっているだろうそれは、胸元に顔を埋めている和紗くんには見えていないのが救いだ。
『弱いとか強いとかの問題じゃないんだよ、和紗くん。加害者が悪いんだ、君は悪くないんだよ。弱さにつけ込む奴が悪いんだ。こんなに良い子なのに…つらかったね…』
「ひぐうぅ…!浦瀬様っ…ふええ…」
どのぐらい経っただろうか、恐らく数分かそこらだと思うけれど、泣き声が止まって呼吸の乱れもなくなった。
『落ち着いてきた…?和紗くん』
「う、あ…はい!あの、ごめんなさ…恥ずかしいところを…それにその」
『ああ、気にしない気にしない!謝らない!俺の他には誰も居ないし、ね?ほら、目閉じて』
顔を上げて恥ずかしそうに頬を染めながら、チラリと涙が染み込んだ胸元を見てくるので、ああそういうことかと気にしないようにと言う。
泣き腫らした目は赤くなっていて、ポケットに入れてあったハンカチを優しく目に押し当てる。
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