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「浦瀬様が…?」
「そうか…、愚行に走った奴はどこにいるん?夕は大丈夫だったか?」
『たまたまトイレに居合わせたというか、金髪クソ野郎なら廊下に置いときましたよ。可能なら回収せず放置して下さい。どっちにしろ奴は今動けませんから。見ればわかりますよ…俺は平気です』
和音くんが近くまで来て、上着をめくって和紗くんの顔を覗いた。ホッとしたような顔をしながら、こちらを見るものだから困りながらも小さく笑いかけた。だって、助けられたのか分からないから。
猿先輩も肩の力を抜いて、安心したようだが表情は硬いままだ。
「かずさ……」
『寝てるだけだよ。大丈夫…怖い思いはしてしまったけど、和音くんが自分を責めるのは違うよ。分かるよね?それは和紗くんも悲しいよ』
「うっ…うう…かずさあ……かずさ、にいつも、守られてばかり、いる、から…強くなろ、って思ってたのに…っ!」
「また、また…!」
和音くんは糸がプツっと切れたかのように拙いながらも声を上げた。手をキツく握りしめ溢れんばかりの涙を溜めていたるが、それもすぐ零れ落ちる。
その姿を見ながらも、和音くんに聞こえないよう小声で猿先輩に話しかけた。
『…宏先輩、和紗くんお願い出来ますか?身体は洗ってあげた方がいいと思いますし、保健室に行こうとしてたので…』
「!おう、わかった。こちらで責任を持ってケアしておく。一応、加害者も確認するが…放置がいいんだったか」
『…手は出さないで下さいよ?金髪は懲らしめたんで』
「あほ!んなことしないわ!懲らしめたん…?まあええわ、あとで確認して他の見回りにも周知させとく」
内容が内容なので、察した先輩も声量を落としてくれた。和紗くんを起こさないようにそのまま猿先輩に抱えてもらった。上着はあとで返してもらえばいいや。大まかに状況説明もしておいた。やはり、こういう事件性のあるものは何かと正式に処罰があるだろうから風紀に任せよう。和紗くんの話も聞くことになるだろうけど…
『和音くん』
立ち竦む和音くんに声をかけるが、聞こえていない。
「僕が、弱いか、ら…あ……」
『…和音くん、和紗くんもね同じこと言ってたよ。弱いから、って自分を責めた。怖かっただろうに、辛かったろうに、悪いのは和紗くんじゃないのに。自分の弱さが悪いんだって』
「か、かずさ!悪くない…!」
双子だからかな、そういうところは似てるんだろうね。
『うん、悪くない。それは和音くんにも言えることだろう?2人とも悪くない。それに和紗くんは君のことが悪いなんて言う子なの?まだ少ししか話してないけど、俺でも分かるよ。相手を責める前に自分を責めてしまう子だ、それは君もだね…』
「和紗…は、優しい…知ってる」
『分かってるなら、ね?ほら、和紗くんのそばに居てあげて、起きた時に和音くんが居た方が安心すると思うから』
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