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「つ、捕まえないから…だから、口聞かないとか言わないで…」
『涼音先輩ちょろすぎて心配になるな…捕まえてこないなら、毎日でもお話しますよ…あとさっき言ってた隠れるところっての聞きたいなあ』
「毎日……やったぁ…元より教えるつもりだったよぉ」
叱られた子供のように、しょんぼりしてると180cm近くあるように見えないのが不思議。垂れ下がったケモ耳の幻覚さえ見えてきた。毎日って言った瞬間に元気になり、尻尾ブンブン振ってる。
あーなるほど、断られることは承知の上で、せめて捕まらないように隠れ場教えるために接触してきたのかもな。考えすぎではない、この子そういうとこある。
『ほんと、スーちゃんってヤツは…』
「ん〜?あー分かっちゃったぁ?えへへ、流石だねえ」
『こっちの台詞なんですけどー、というかいつから居たんですかねー』
「ナイショ♡ま、ついてきてぇ」
にしても、人の気配はしなかったんだけど背後取られたのがショックすぎる。油断したなあ…って思った。人差し指を口許に添え翡翠色が怪しく細められ、語尾にハートマークが見える…様になるからチワワちゃんが見たら卒倒しそうだな。
『いや、手』
「こうしてないと、狙われるかもよ〜?俺が捕まえてるって牽制しとかないと、すれ違い様にピッされるかもなあ」
『このままでお願いします』
ついてきてと言いながら腕掴んで前に進むもんだから、手離してくれって思ったんだけど、なるほど了解。即答した。
そのまま腕を掴まれた状態で、4階から5階…6階と涼音先輩と階段を登っていく。歩きにくいが仕方ない、何故なら階段ですれ違う赤バッジの方々がギラギラした目でこちらを見てくるのだ。
それでも手を出してこないのは、涼音先輩がガン飛ばして腕掴んでいるからなのだろう。青バッジの子は良いなあ…みたいな顔してるし、何なら僕も捕まえて…って言ってきてるけど涼音先輩はニッコリ笑顔で「あとでねぇ?」って返してるから流石としか…あと、時たま浦瀬様捕まってしまわれたの…!僕が捕まえたかった…などと聞こえましたね。
こんな楽な鬼ごっこでいいのかしら〜?奥様〜?って脳内の井戸端会議が開かれる。普通に歩いて逃げられるんだが、鬼ごっことは?
そんなこんなで、6階に到着。ここは3年生の教室がある階だ。それなりに人は居るが、涼音先輩を見た途端道を開けてくれた。デジャブ感じるわ。草になった俺のようだ…
「涼音様だ…」
「お美しい…捕まえてもらいたいなあ」
「だめだよ!この階に来た時の涼音様にはあまり近寄ってはいけないんだよ」
「えっ、そうなの…?」
「あの部屋があるから…」
1年生らしき子達が何やらお話しているので、聞き耳を立てていると何やら気になるワードが
『この階に来た涼音先輩に近寄ってはならない…?あの部屋?』
「あーそれなら、すぐ分かるよぉ」
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