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そう言って6階の廊下を2人で歩いていく。突き当たりにある空き教室を目指しているようで、足早に進む。急いでる…?
「もうすぐ生徒会と風紀交代だからさぁ…」
『エスパーなん?』
「なーんとなーく」
あ、もうそろそろ1時間経過するからか。今まで1時間のわりには濃厚な内容だった気がする…木登りして腐エンジョイしたり、トラブルあったり、草モジャになったり、金髪野郎撃退したり…情報量が多すぎるね?
「さ、入って入って〜」
『ここ入っていいの…鍵は特にないんだ』
「鍵なくても入ってくる子はほとんど居ないねぇ…」
6階の最奥にある空き教室はドア窓に黒カーテンが付けられているのか、中の様子は見えない。涼音先輩が先に入り、後に続いた。そこに広がっていた光景とは…
『なんじゃこりゃ…』
電気が点けられた瞬間、視界が翡翠で埋め尽くされた…緑、翠、碧
様々な色み、形をしたソレらは机に黒の布を敷いた上にズラリと並んでいた。一つ一つ丁寧に、美術館のように置かれてはいるものの数が異様だった。全て翡翠などの緑系の石、エメラルドもあるか…?え?本物?いやいやいやいや空き教室だよな?空き教室だよな??え?なん?ここは異世界ですか?ってぐらい輝いてるぜ…パワーストーンだからか、パワー感じてる。
異質すぎる、教室内に呆気に取られていると涼音先輩が爆弾発言をかましてきた。
「綺麗でしょ〜〜ユウヒと同じ色…ここに居ると落ち着くんだよねぇ。集めるの癖になっちゃって、因みに全部本物☆」
『……言いたいことは山ほどある…けど…学校にんなモン置いとくなーーー!!?!?いやおかしくない?翡翠専門店か?ってぐらいの量だし、そもそも空き教室にこんな』
「ここ使われてなくて、1年のときに3年担当のセンセに“落ち着ける場所”として使っていいか聞いたら」
「いいよって言ってもらえたんだぁ」
にっこりよりはニンマリ笑顔で楽しそうに話す涼音先輩。空き教室を丸々1年生に明け渡すのもどうかとは思うけど、ちゃんと聞いてたのは偉いね…チャラ男でもあり不良でもあるけど、主に金持ちが通う学校だもんなあ…涼音先輩は荒れるときは荒れるから落ち着いてくれるんならっていう判断か…いやにしても、
『これ落ち着ける場所かね』
「だーい好きなユウヒの色に囲まれながら、あのソファに横になると安心して気持ちよく寝れるんだぁ〜」
先程から何を話すにしても俺を見つめてくるから目のやり場に困る。正確には俺の目。まるで、周りの翡翠が偽物で俺の目の中に本物があるんだと言い聞かせるような視線。強調して言ってくるもんだから、流石にタジタジである。
『そうかい…で、気になってた…部屋があるから涼音先輩に近寄ってはならぬ〜とは?』
「それはね〜ここ来る時は荒れてたりイライラしてたりして〜癒し求めに部屋に来てるから、誰も近寄って来なくなったぁ…かなー?」
『殺気でも出しながら歩いてるんか…?』
「間違いではないねえ」
否定をしろ、否定を。鍵がなくても誰も入ろうとしないのは、この荒れると手がつけられない涼音先輩を知っているからだろうと俺は思う。
《ザッ……神野だ。今、1時間経過したため生徒会は直ちに戻って見回りに!交代で風紀が参戦だ、皆の者!後半戦も楽しみたまえー!》
「『あ』」
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