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夕と別れた涼音。先程まで駆け足だったが、夕から見えない範囲に来ると速度を落として歩いていた。問題はその表情である。すれ違う者は恐れ慄いて自ら避けていたり、ある者はヒッと声を出し逃げ去る。それ程までに
「……誰だよ、夕に痕つけやがったの」
彼は怒りを露わにしていた。否、表情が抜け落ちているため、見た目の問題ではない。普段の彼からしたら尋常ではない怒りを周りは感じていた。その殺気立った彼の纏う雰囲気を人は本能的に恐れてしまう。力任せにガンッと壁を蹴ると、周りには誰も居なくなっていた。
「は、やっぱり聞いとけば良かった」
「無理にでも上書きしたかった」
「……でも」
背後から抱き締めた際に見えた首元左右の赤い痕、明らかに誰かにつけられたものだ。それを視界に入れた瞬間、涼音は怒り、絶望にも似た気持ちになり自制が効かなくなりそうだった。
だが、表には出さない。いつも通りを装い、夕との時間を優先した。
「嫌がられたらやだなぁ…」
「矛盾してるかな〜」
あの子のことだから、回避は出来るはずなのに、痕があったことが気掛かりだ…そもそもTシャツ1枚だから首元丸見えなんだけど、分かってるだろうか?
「いや、あれは完全に忘れてんじゃね…」
そもそも気にしてない可能性もあるが、己のジャージ着せとけば良かったなと涼音は後悔ばかりだった。
「さいあく」
西柳院 涼音は彼に心を乱されてばかりだった。それを自分でも良しとしているから、タチが悪い。
「腕の中に閉じ込めても、スルリとどこか行っちゃうもん…そうさせてる俺も俺かぁ」
先程の殺気は何処やら。項垂れながら、その場を後にした。
遠くの方から視線を感じてはいたが、視線には慣れているため特に気にすることはなかった。これが、仇となるとは知らず。
「せめて捕まってくれるなよ」
その願い、叶うか否か。
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5000スター突破感謝で、何か描こうと思っていましたが…
以前アンケートでスタンプ送ってください〜というのを、やった際描いた後に結果が変わってしまって…いや有難いことに締切後にスタンプいただいてまして、反映されないからね!?とツッコミ入れてました。
何が言いたいかというと、今スタンプを見ますと圧倒的な数字になっておりまして
これは、タイミング的にも
描いてしまえばいいなと
ということで、【理事長(兄)と夕】の2ショ描かせていただきますね!いつになるかわかりませんが、皆様からいただいたスタンプ無駄にはしません…という気持ち
失礼致します。白星
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