新入生歓迎会と…?②

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「邪魔」 「え、……ぅぐッ!」 『!!』  やめる気になったのかと思えば苛立った様子で、清を殴り飛ばした。小さい身体が吹っ飛んでいく光景を見て目を見開く夕。床に倒れ込む彼はピクリともしない、ワンパンで沈めやがった…仲良さげに会話していたのを聞いていた分、容赦ない打撃に驚愕する。それはきっと、やられた側が一番感じていることだ。 「つづき……」 『ふざけんなよ』 「ッ……俺、のになっテ、翡翠のコ」 『なんか知らないけど、事情はどうだっていい…自分の仲間殴りやがったな…?オイ』  つづきなどと言って、また手を這わせようとした亜久兎は夕の地雷を踏んだことに気付いていない。威圧感ある声にビクリとし、怯え、戸惑いながら懇願する亜久兎。内容なんてどうでもよかった、俺は真っ直ぐ目を見て怒気を強めた。  清は彼の為にも止めようとしてくれていた。これ以上やれば、処分が厳しくなる。その思いもあったはずだ、だから力で敵わなくても必死にしがみ付いて止めに入っていた。清も何かしらしようとしていたことだろうが、限度を分かっていた。  ぶっちゃけ、こちょこちょ制裁とかだったりして?なんて思った。そうだったら可愛いなチキショウ。  それをあんな…… ___久しく、頭に血が上る。ただただ腹が立った。縄が手に食い込むことを気に留めず力の限り引っ張る。少し緩くなったとこをこじ開けるようにして縄を解いた。かなり力技のため手首痛めたが、この時の夕はそんな些細な後先のことを考えもしなかった。火事場の馬鹿力というやつだった。 「あ…」 『そういうの嫌いなんだ、だから…歯ァ食いしばれ』  上体を起こし、狼狽える亜久兎目掛けて右ストレートを食らわせようと腕を引いた。  気配に敏感の夕でさえ、この時ばかりは周りが見えていなかった。それ故に、もう1居たことにも気付かない。 「ガッ……」 『へ…』  一発入れる気満々だった握り拳の力が解けた。  何故なら、夕が拳を入れる前に亜久兎が倒れたからだ。突然白目剥いて倒れたのを唖然と見つめた。何が起きたのかと、困惑する。 「…大丈夫か」  はた、と。声がした。亜久兎の後ろに居たであろう人物に目を向けて時が止まる。手刀をしたのだろうか、手が垂直の形をしている。そこではない、夕が動きを止めたのは、瞳。その瞳は 『むら、さき…』 27ddf4fc-4d95-4705-b323-a157de6cd156  アメジストと目が合う。何処かで、見た輝き、真の強い優しい眼差し。それを、知っている。  呆然とする夕に、目前の黒髪で吊り目の美男は困り顔をした。 「?ああ、目か、自前でな…怖いか…」 『宝石みたい』  何を思ったか、怖がらせないようにか、優しく声をかけられる。口元にある2つの黒子が揺れる。今、襲われていたから当然といえば当然だが  恐れられることがあるんだろう。俺は怖いとは思わない。思えなかった。だから、無意識の内に口に出していた。宝石のアメジストが目に埋め込まれてるんじゃないかって、そう思っていたから。うん、彼の瞳は忘れることはない。 「っ……それ、は、」
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