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ヒスイとアメジストが視線を交わす。彼は目を見開いた。
「まさか、そんな、いや…翡翠の瞳は」
小声で何やら悩ましげに呟いていて、困惑と焦りが見えた。
『えーっと、あの』
埒があかないので、気疎げに声を発した。ハッと我に返って、謝罪をしてくる。気にしなくていいのにね。
「すまない、その知人に似ていたものだから…それどころではないな、悪かった」
『気にしないでください』
「風紀の九条 詠月だ。委員長を務めている。君は1年浦瀬夕で合っているか?」
『はい。九条先輩、ですね。今日は良く風紀の方にお世話になってて申し訳ないです…すみません…なんか、色々と』
黒髪に吊り目のアメジストで、厳格そうな出立ちと妙に落ち着きのあるイケメンさんは、九条詠月先輩だそうで、詠月は恐らく月詠を逆にした字だろうな、この方ツクヨって通り名だから。
風紀コンプリートしてしまうのか?風紀コンプ!なんちゃって。いや待って委員長とこのタイミングで邂逅してしまうの?夕ちゃん吃驚なんだけど。
この感じは話し通ってるな、猿パイセンか?見回りご苦労様です!!すみません!お騒がせしてます!!
「ん?ああ、君かサル…宏が言ってたな。生徒の名前と顔は覚えているから、恐らくそうだろうと…もう一度聞くが、怪我は」
『サ……、すごい記憶力ですね!あ、怪我はだいじょ…っ』
おいこの人今、猿先輩のことサルって呼ぼうとしたぞ!!!!!!いやもう確実に呼んだわ副委員長を!サルって!!!普段呼んでるな?呼んでるでしょ?真顔で言い換えてるけど(あ、しまった)とか思ってるでしょ!!
怪我は大丈夫って言おうとしてたのだけど、思い出したように手首がズキリと痛む。見れば、先程力任せに解いたから赤く縛られた痕が残っていた。
「手首か、見せてみろ」
『大したことはないですけど、イテテッ』
「嘘をつけ、内出血してるだろう…悪かった、遅くなってしまった」
『足じゃなくてよかったです、走れます…え?九条先輩のせいじゃないのに謝らないで下さいよ。俺の落ち度なんで…助けていただきありがとうございます』
続行するつもりか此奴…?って顔してる。面白い顔。腕はあんま使わないし…?鬼ごっこだし??ただ痕が目立つから、どうしようかな。
本当に律儀な人だな。風紀だから、責任を感じているんだろう。眉を歪めて悲痛な表情を浮かべている。
貴方のせいじゃないのに、助かりましたよ大丈夫。そう目で語り、歯を見せて笑ってやった。一発殴りたかったですけどね!と一声付けて。
「!ははっ、それはすまなかった」
一瞬驚いた。すぐに破顔して爽やかに笑って、屍だが殴っておくか?と床に突っ伏してる亜久兎を横目で見る九条。
『流石にそんな趣味はないですね!オラァッ!』
お?追い剥ぎのプロになれちゃう?と亜久兎の服を素早くひん剥いた。下着は残しておいた。わたくし慈悲深いから。突然の奇行を目にして、九条先輩はポカンとしている。
「そっ、そっちの方が、いい趣味だな。確かに…くっ」
『いいでしょう?おや、クマちゃんパンツ履いてますよ』
亜久兎の下着はクマちゃんが真ん中にドンと主張していた。まじかよクマちゃん、それを見た九条先輩が笑いを堪えながらも「可愛いな…」とか呟いてるよ。貴方可愛い物好き?うっそ、ギャプ萌え、初めて知った
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