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『無理しませんよ、え?わっぷッ』
名前を呼ばれた途端に、頭に何か被された。その上から、手を頭に乗せて一撫で。それから、ポンポンと触れられて気付く。
すんっ、とカモミールの香り、がした。香りが鼻をかすめて心地良くさせてくれる。以前ツクヨに「香水つけてる?」と聞いたことがあった、何もつけていないと返ってきたときは目を丸くしたかな。
香水をつけてるわけでもないのに彼からは、柔らかな甘みと少しの薬草を嗅いだような香りを感じて不思議だったのだ。
「俺ので悪いが、着てけ」
『?あ、上着…いいんですか?』
手繰り寄せ、頭から下げたソレは上着だった。見れば九条先輩が半袖になっている。サイズの差が否めないけれど、手首の心配をしてくれたのか
「…あと上まで閉めとけ」
『?あ、あぁ〜』
トントン、と自分の首元をジェスチャー付きで指差しされて気づいた。忘れてましたわ。キスマの存在を。
配慮に感謝しつつ、KUJOと書かれたジャージに袖を通す。明らかにブカブカではあるがないよりはマシという、いや彼シャツならぬ彼ジャーみたいなサイズ感なんだが?萌え袖どころの話ではない、タグを拝見。
『エルエル…LL?俺はS、そんな』
「でかいな、悪い」
『悪気のなさが、また憎い!!』
「これから大きくなれるさ」
『1年も現状維持の俺にもう成長期なんてものはないんですよ!!!何センチなんですか!?憎い!!!』
「185くらいだったと思うが」
語尾が憎いになってるぞ、と言われてるが知らない。生温かい目で見ないで。
皆様聞いてください。16cm差です。平均身長バグってんのかな?どう思う?俺そんな小さい!??夕は悲しくなってきた。こうも自販機レベルばかりだと、小人になった気分だ。
仕方がないので、手首が隠れるとこまで捲っておく。これ下脱いだらワンピースみたいになるぞ!とか誰得なんだろうか。ことちゃんなら似合う。俺より身長あるけど。
『上着ありがとうございます。洗って返しますね』
「気にしなくて良い」
いや泥だらけになるかもしれないんで。と返したら、どろんこ遊びでもするのか?鬼ごっこで?と笑われた。ン゛ン、イケメンのシャイニングスマイルは眩しいな、健康に良い。
そういえば、と亜久兎を見る
『こちらのご遺体は宜しく頼みます。あちらの子は共犯ですが、度が過ぎると止めに入ってたので優しくお願いしたいです』
「ご、いたい…プッああ、いや。分かった」
吹き出したけれど、回復が早い。真剣な面持ちで頷いた。流石、風紀委員長だ。
今日こういうやり取り何回目ですか?と思うけれど、トラブルに巻き込まれやすい体質なんだ!えっへん!──なんでや。世知辛い。
身支度を整えて、バッジも確認。
バッジを確認…あ。
『あ、風紀って確か』
あれ?これは、あれ?でも、このご遺体を頼んでしまったんだけれど?
「鬼だな」
なんでもないように答える九条先輩。風紀は生徒会と交代で今は鬼側だ。そうでした、そうだった。
ということは──────
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