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春の日差しが、降る朝。ソラは、ベッドの上で目覚めた。
長い長い夢を見ていたような気分で、寝ぼけ眼を擦る。
起き上がって背伸びをする。部屋に置かれた大鏡には、灰色の髪の毛と瞳を持つソラが映る。
彼の年齢は十五歳。身長も伸びはじめ、母親のエリサを追い越したばかりであった。
彼は、上着とズボンを履いて部屋を出る。召し使とメイドが居ない変わりに、数人の住人が住んでいる広い家から飛び出して表通り出た。
朝の柔らかい日差しが、ソラを追い掛ける。
どこに行くという考えはない。散歩は彼の日課であった。周りに黙した人々が居ることを知りながら、歩く速度を早めていく。
人気の無い裏路地まで来て、スラム街へ向けて走り出す。
種術による空からの一撃が、ソラの足を狙う。
ソラは、裏路地に放置されたごみ箱を足掛かりにして、屋根に上る。
攻撃を仕掛けて来た輩は、何時も覆面をしている。背丈はソラより低く、声も曇っていて性別の判断が出来ない。毎度毎度、攻撃を繰り返して来る覆面は、ソラが真向かいに立つと直ぐに逃げてしまう。今回もまるで掌を返すように逃走する覆面をソラは、舌打ちして追い掛けた。
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