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「じゃあ早く力を頂戴」
いつもそんな簡単に話すことがないのに
勢いと底から湧きあがるわくわく感に乗せて
いつもより高めのトーンで聖魔君をせかす。
そんな僕は気持ち悪いくらいに頬が緩んでいる気がした。
心無しか少し頬の赤い聖魔君
どうしたんだろ
「じゃあ星那瞳を閉じて」
「うん」
言われた通り瞳を閉じると暗闇が一面に広まる。
広がる暗闇がやっぱり怖くて少しだけぎゅっと手に力が入った。
瞳の外で、ごにょごにょと何かを呟いているのが耳に入り込んでくる。
そして、冷たい手が私の前髪をかきあげた。ひゃっと思わず声がこぼれる。
くすりと笑うと低い声。
この冷たい手は聖魔君のなんだ。やっぱり魔王だからこんなに寂しそうで冷たい手なのだろうか
「力を今授けよう
星那力を抜いて、いくよ」
聖魔君が手が僕の髪を優しく撫でると、無意識に入っていた力をふっと抜けた。
ふいに、僕の額に柔らかい何かがふれる。
その刹那、
体の奥の方がすぅーと熱くなっていく
そして、膨大な量の知識が脳裏に広がっていく。
痛い、辛い、苦しい。
幾年にも続く【----】の長い歴史が僕の脳内に入り込む。
あそこに座っている
女の子は誰?
そこで僕の思考は途切れた。
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