お前らだよ

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その夜。 A君の彼女はドアをノックする音で目覚めます。 「来た・・・」 彼女は必死でそれを無視します。A君はドアを叩きつづけます。 「おい!」「俺だよ!」 「ここを開けてくれよ!」 部屋の隅でA君の彼女は必死に耳をふさいでいますが、彼との思い出と懐かしさにたまらず、ドアの方に近寄ります。 「開けてくれよ、俺だよ!」 音はドンドン大きくなる。 そっと近づくA君の彼女。 ドアごしに見えるA君の影ですら涙が出ます。 気付けばA君の彼女はドアの前に立っています。 ドアを開けそうでした。しかし、A君は死んでいるのです。 A君の彼女は必死で声を出しました。 「・・なたは・・・・・んだの・・・!!」 ノックは大きくなります。 そしてA君の彼女はせめて成仏してほしいと思い、決死の覚悟で一気にドアを開けます。 「あなたはもう死んだの!!!!」 『死んだのはおまえらのほうだよ!!!!』 A君の彼女は気絶していました。 そして、次に気付いた瞬間 彼女は治療室のベッドの上にいました。 目の前にはなんと死んだはずのA君がいて、泣いて喜んでいます。 状況が全く掴めない彼女にA君は話しかけます。 「競争して、俺が家に着いても、お前達はぜんぜん来なかったんだよ。」 「それで来た道を戻ってったらお前達の車がめちゃめちゃでさ・・・前の座席に座ってたB達は即死だった・・・でもお前だけは軽傷で済んでたんだよ。でもずっと気を失ってて・・・」 A君の彼女は最初はその事実だけを飲みこんでいましたが、すぐあとにとても恐ろしくなり、ずっとA君に抱き着いています。 即死だったB君たちは、生死をさまよっているA君の彼女を引きずり込もうとして、精神の中に入りこんできていたのです。 あのままA君の呼びかけをずっと無視していれば、A君の彼女も死んでいたのでしょう。
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