とりかごをこわしたひと

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まだ歯も生え揃っていないくらい小さい時からの付き合いだった。 なにをするのもどこへ行くのも一緒で、僕が少しでもいなくなるとあの子はわんわんと泣き出して周りを困らせた。 その度においていかないで、ひとりにしないでと泣くあの子の手を握りしめ、僕はおいていかないよ、ぜったいにひとりになんかするもんかと言っていたし、あの子を守らなければといつも思っていた。 なのに、高校に行って同じクラスになって、転入生がきて、僕は明るくて可愛らしいその子に夢中になって。 僕は、あの子の手を離してしまった。 絶対に離さないと離れないと誓っていたのに。 転入生が誰にでも平等に優しいあの子を、親友だと言うのに嫉妬したんだ。 そして僕は言ってはいけない、してはいけない最低なことをあの子にしてしまった。 「調子に乗るなよ、僕がお前なんかと好きで一緒にいるわけないじゃないか。親が言うから仕方なく側にいただけだよ。わかったら今後一切僕や彼に近付かないでくれ」 あの時、久しぶりに君の泣きそうな顔を見た。 年を重ねるごとに泣かなくなっていた君の、あの泣き顔は泣き虫だった頃の顔とダブって見えて、僕は慌てて見ないフリをしてあの子の前から立ち去った。  
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