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あの日から1か月、母は家を出たきり帰ってこない。
いや、正確には姿を見ていないだけだ。
毎週リビングのテーブルに1万円置いてあった。
あの夜、私は緊張のせいか眠れず兄の部屋で寝た。
寝たふりをしていると兄のかすかに漏れる泣き声が聞こえてきた。ーー兄へのダメージは私以上だったと思う。
小3だった私にはまだそれがあまり理解が出来なかった。
ただ、「パパは見捨てられた。」ということはわかった。
1か月間、私と兄は母がいない中かなり頑張って生活した。
料理経験がない小3の女の子が包丁を握り、火を使う。
金銭感覚がまだしっかりと身についてない男の子が計算をし、買い物をする。
1週目はそれはそれはもう大変。
2週目はちょっとなれた。
3週目はもうすっかり料理も買い物もできるようになっていた。
そしてそんな生活がなんと10か月も続いた。
私はケーキも焼けるようになったし、グラタンもつくれるようになっていた。
そしてそれからさらに2か月もの歳月がたったある日、事件は起きる・・・。そんな生活を始めて約11ヶ月。その事件は起きる。
私は朝のうちに兄から、学校の帰りにおつかいを頼まれていた。
買うものはどう考えても焼きそばの材料だ。
最初から言ってくれれば良かったのに。
買い物を終えて家に帰る。
そしてドアを開けた。
すると、久しぶりに見た、ハイヒール。
ーーーママがいる!?
兄の靴もあることから2人がなにか話しているに違いない、と思った。
緊張しながらリビングのドアを開ける……。
そこにあったのはとんでもない光景だった。
虚ろ目になりしかも全裸で手足を縛られた兄、それを犯している母。
私は目を見張った。
ママが…ついにおかしくなった!!
どうしよう!
すると兄が私がいるのに気づいたみたいで、意志のこもった瞳で叫ぶようにこう言った。
『美性、早く逃げろ!俺は大丈夫だ!美性、はやくーーーー!』
母もこちらを見た。
するとやさしく微笑みながらこう言った。
『あら美性お帰りなさい。いい子にしてた?』
逃げなきゃ。でも手足が震えて動けない。
ぐったりとした兄をよそに、母がこちらへ近づいてくる。
『い……いや!!来るな、来るなぁっ!!!』
『あら美性、ママに対してその言葉は無いわよね?いつからそんな悪い子になったの?』
コワイ!
でも逃げられない。
どうしよう!!!
そんなとき、私の体が青い光に包まれる。
ーーーーなにが起こってるの?
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