幼い日々

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『いたっ』 私に触れようとした母の手が弾かれる。 風の盾によって。 『ついに目覚めてしまったか…』 母は舌打ちをして、着替えて出ていった。 すぐに兄に駆け寄る。 手足の縄をほどき、『大丈夫?』とたずねた。 すると、クスクス笑いながら兄がこう言った。 『一時はどうなるかと思ったけど、よくやったなw』 なんか気が抜ける。 よく笑えるな、なんて思っていると視界がぼやけて体がグラリ、となる。 『おい美性!?』 ーー視界が真っ白になった。 目覚めたのは22時。 頭には冷えピタ、自分の真横に手をついていかにも『看病途中に寝ちゃいました。』って感じで寝ている兄。 私はもう一度目を閉じた。 ーー今日は何が起こっていたのか。 考えただけで心がズキズキと痛む。 残像が見える。 母と兄がひとつに……… 余計に頭が痛くなってきた。 もう一度寝ると夢を見た。 今日の悪夢、を。 何度もうなされた。 そのたびに兄の手が私の頭に乗せられるのがわかった。 3日経つと熱は下がった。 優也と正広が家に来た。 『美性、大丈夫?』 優也が心配そうに言う。 正広が私の頭を撫でる。 そしてなぜか正広は兄の方を少し睨むように見た。 そして『翔性、ちょっとうちに来い。』と言った。 正広はもしかしたらいろいろなことに気がついていたのかも知れない。 もちろん兄はうなずく。 そして兄は『2人はちょっとこの家で遊んでて。』と言った。 そして2人は出ていった。 私と優也は久しぶりにかくれんぼをし始めた。 優也が鬼。 私は二階の父の部屋のクローゼットに隠れる。 1分経って優也が探し始める。 洋服からはどれも同じにおい。 ーーおそらく父のにおいがする。 父が追放などされずに今もここにいたら母は家庭放棄せず兄は母に犯されずに済んだんじゃないか…。 とかバカなことを考えたりする。 『あ、わかったー。ここだーっ!』 『開けないでっ!!』 と私は言ってしまった。 『…美性どうしたの?…泣いてるのわかってるよ。』 『パパが出ていかなければこんな辛い思いしなくて済んだのかな?』 優也がこんなこと答えられるはずがない。 だがしかし優也にしては意外な答えが帰ってきた。 『美性のパパが出ていったから俺らは今こうやって一緒にいられるんじゃない?』余計に涙が出てきた。 優也はそっとクローゼットのドアを開けて私を抱きしめる。 そして『一緒にいられるっていいね』と言って笑った。image=439527048.jpg
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