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「ところでウシャスさん、さっき新しいオアシスを見つけたって言ってたけど、それはどこにあるの?」
ウシャスから「サァラブからの夏の王情報」を一通り聞いて楽しんだクロノスは、興味津々(しんしん)に尋ねた。
「シャオくん、ごめんなさいね。あたしたちは実は情報屋でもあってね、新しいオアシスの場所はとっても貴重な情報だから、それなりの報酬(ほうしゅう)を頂かないと教えてあげられないの」
ウシャスは申し訳なさそうにそう言うと、にっこりと微笑(ほほえ)んだ。
「でもそうね、たまたま新しいオアシスを見つけたお友達なら、教えてくれるんじゃないかしら?」
そう言ってウシャスは、クロノスの後ろで青ざめているサァラブをちらりと見た。
「なるほど。それじゃあサァラブ、今からさっそくその新しいオアシスにとやらに行ってみようじゃないか!」
新しいもの好きのクロノスはにやりと笑みを浮かべると、サァラブの方へ向き直った。
「や、でもおー……し、シャオくん、新しいオアシスはここから結構遠いっすよ?」
クロノスの突然の思いつきに、サァラブは困ったように頭を掻(か)く。
「サァラブ、『自由な王様』のために情報収集するのも、部下の立派な仕事だろ?」
意味深な笑みを浮かべるクロノスに詰め寄られ、サァラブは結局クロノスの提案を受け入れるしかなかった。こうして二人はウシャスに笑顔で見送られ、オアシスを目指して旅立ったのであった。
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「……と、いう訳なんだ。これからの管理に、このオアシスも追加ってことでよろしくな」
クロノスは、オアシスに屈(かが)みこんで水をすくっている白い長袖姿の青年に向かって言った。
「ふ~ん、水質もそこそこいいみたいだな。最近街にやってくる商人が増えて、街に一番近いオアシスがちょうど渋滞していたところだ。もう少し調査が済んだら、新しい経由地としてここを整備しよう」
青年は水辺からゆっくりと立ち上がると、手のひらにすくった水をオアシスに落とした。容赦(ようしゃ)なく照りつける太陽の光に、水滴がきらきらと反射する。
「悪いなシリウス。急に連れ出しちまって」
オアシス全体を眺めながら腕組みをするシリウスに、木の上で休んでいたサァラブが声をかけた。
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