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「なんだ、サァラブの知り合いなのか?」
クロノスの言葉に、サァラブはいや……と、何やらもごもごとお茶を濁したように呟いている。サァラブの煮え切らない様子にクロノスが首を傾げていると、紅い髪の女性がうふふ、と笑みをこぼして言った。
「知り合いといっても、あたしたちがキツネさんと出会ったのはつい二日前のことなの。あたしたちが最近新しく見つけたオアシスで水浴びをしていたら、キツネさんがいきなり木の上から現れて……」
「わーっ、ちょっと待った! それは誤解だ! おれっちが先にオアシスの木の上で昼寝をしてて、目を覚ましたらいつの間にかキミたちが水浴びをしていたんだ。隠れて覗(のぞ)いた訳では決してないっ!!」
サァラブは慌てふためいた様子で女性の言葉を遮(さえぎ)ると、懸命に弁解した。そんなサァラブを、クロノスはふーん、と面白そうに眺めた。
「うふふ。まあ、今回はそういうことにしておいてあげる♪あたしはウシャス。この踊り子たちの団長をやってるわ。あなたのお名前は?」
ウシャスと名乗った紅い髪の女性は、そう言ってクロノスをまっすぐに見つめた。サァラブは納得のいかないような顔をしていたが、気を取り直して一つ咳払いをすると胸を張った。
「ええー、この方は夏の……」
「シャオだ。サァラブと一緒に夏の王に仕(つか)えている。俺は王の執事として宮殿で働いているんだ。ウシャス……素敵なお名前ですね! これからよろしく!」
言葉を遮(さえぎ)られ隣であんぐりと開けているサァラブをよそに、クロノスはウシャスに笑顔で会釈(えしゃく)した。
「シャオくん、よろしくね。キツネさんから話を聞いたわよ。夏の国の王様ってとっても自由な方で、お世話が大変なんですってね」
そうなんですよ~と楽しげに返事をするクロノスとは対照的に、サァラブの顔はもう真っ青である。
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