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「ちょっとおおお? チョップって……チョップって……」
「いつまでも女々しいこと言ってるから渇入れてやろうかと思ってさ。過ぎたことを引きずっててもしょうがねぇだろ? 俯いてばっかいねぇで前見ろよ宮」
「春樹……」
痛む頭を擦りながら励ましてくる弟の春樹を見上げる。
「いつまでもこんなんじゃダメだって分かってはいるんだけど……」
「分かってるなら後はそれを実行するだけだろ?」
簡単に言うけど、そう簡単に行かないのがこの世の中だ。就職氷河期の今、思ったように職は見つからない。
そのことを考えてしまうと弟の励ましで浮上してきた気持ちもまた沈んでいってしまう。
「春樹は簡単に言うけどさ、就職先なんてこの時期そうそう見つからないよ」
「姉思いな弟で良かったな宮」
そう言って春樹が履歴書に続いてもう一枚の紙を差し出してきた。
「……restful?」
春樹が渡してきたのは洋風のお洒落な定食屋のチラシ。
「ここ大学の先輩がバイトしててオーナーに話通してもらったから、明日面接してこい。いいな?」
「えええっ!? そんな勝手に」
「勝手に……何? 俺、感謝はされても文句言われる筋合いはないよなぁ」
にっこり、文句を言わせない笑顔にあたしは半ば強制的に、春樹が決めてきた仕事先の面接を受けることになった。
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