第二章 不安

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 その時、右腕に備えられた時計型通信機から、着信を告げるアラームが鳴り響いた。  一瞬でその表情を鋭くしたかおるは、足を止めてそのスイッチを入れる。 「……はい、かおるです」 『忙しい中すみません。少々報告が』  通信機の向こうから、感情を極力抑えた女性の声が聞こえてくる。  ”この場所”に駐在している通信オペレータであることは、他ならぬかおる自身が良く知っていた。 「何かあった?」 『実は東京湾付近から、不自然なエネルギー反応が漏れているのをキャッチしまして。今のところ実害は出てないのですが…』  言い淀むオペレータの気配から、事態が本来ありえない状態でありつつも、何がおかしいと指摘することの出来ないもどかしさを抱えていることを察することが出来た。
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