第二章 不安

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「え。あ、ごめんなさい」  自分で急かしておきながらその相手を放っておくのは、どう考えても礼を失している。申し訳ない気持ちを抱くかおるだったが、当のジークはさほど気にしていない様子である。  その表情を僅かに険しくしながら、彼は告げた。 「…確かに、ちょっと嫌な感覚だね。例えるなら、秋刀魚のはらわたを大根おろしや醤油抜きで呑み込んだような感じかな」 「…………分かるような、分からないような微妙な例えですね、それ」  呆気に取られた表情のまま、素直な感想を述べるかおる。それに対して不思議そうな表情を浮かべるジークだったが、それ以上の指摘をすることなく再び笑顔を浮かべて見せた。 「ま、大丈夫だよ。いざとなったら俺が、スーパーの特売で鍛えた目利きを駆使して厳選した素材を使った大根おろしを用意して見せるからさ」  何とも不思議な言い回しであり、すっかり毒気を抜かれてしまっては、最早笑う以外に無いかおるである。 「……ふふっ。じゃあ、期待させてもらいますね」  素直な笑顔と共に告げられた一言に、ジークは嬉しそうに頷いた。
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