第九章  最強の敵

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「先ほど申し上げましたように、全ての源となった者です。 仲間、というより下僕達と言ったほうがよろしいのですが、その者たちからは普段は伯爵様と呼ばれているようでございます。 しかしもう一つの呼び名がございます。 普段はあまりにも恐れ多くて下僕達でさえ口に出すのをはばかる、半ば封印された呼び名でございます。 その呼び名は“ドラゴンの子”でございます」 「ドラゴンの子! ……だって」 龍夜が叫ぶような大声をあげた。 二階堂が思わず龍夜を見る。 その表情には明らかな驚きの色が現れていた。 ゆづきがゆっくりと噛みしめるように言った。 「はい、龍夜様、ドラゴンの子でございます」 思わず中腰になっていた龍夜だが、やがてどたりと床の上に腰を下ろした。 そして力なくつぶやいた。 「ドラゴンの……子。……よりによって……ドラゴンの子……ってか」 二階堂が激しく首を振り、龍夜とゆづきを交互に見た。 「おいっ、いったい何なんだ、そのドラゴンの子、とか言う奴は?」 ゆづきが努めて静かに答える。 「それに関しましては、いくら二階堂様でも、申し上げることはいたしかねます」 龍夜が、強く吐き出すように言った。 「ドラゴンの子は、ドラゴンの子さ」
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