45人が本棚に入れています
本棚に追加
1944年 10月 リエージュ上空
リエージュは大戦が始まるまでベルギーの領土だったが、今ではドイツが占領している。
そんな地の上空で1機のBf109G(グスタフ)が煙を出しながら、急降下爆撃機〈スツーカ〉のように、急降下を始めた。
それは地面に落ちる前に爆発した。
爆発した機体のパイロットは第103戦闘航空団第Ⅰ飛行隊第3中隊の隊長だ。
隊長がコクピットから脱出したところを見ていない。
第3中隊は1個小隊を欠いた12機で出撃し、戦闘開始からこれで8機が落とされたことになる。
隊長が落とされたところを見ていると、右の主翼から弾が当たる音がした。
背後を確認すると、P51マスタングがいる。
慌てて回避機動をとるが、マスタングはついてくる。
また音がした。
「ホフマン少尉、左の燃料タンクが燃えています!」
左を見ると燃料タンクが燃えているのが見える。
このままだと爆発してしまう。
そんな時、後ろから爆発音が響いた。
背後にいるのはマスタングではなく、僚機のメリ・シュトレーゼマン伍長の駆るBf109Gだ。
どうやら彼女がマスタングを落としたようだ。
「ありがとう、シュトレーゼマン伍長」
「今のうちに脱出してください」
「そうさせてもらうわ」
そう言うと、キャノピーを開けて飛び出した。
そしてパラシュートが開き、無事に着陸した。
「飛行場までは20キロぐらいかしらね」
彼女は飛行場へ歩き始めた。
彼女が飛行場に着いたのは夜遅くになってからのことだ。
最初のコメントを投稿しよう!