名ばかりの中隊

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1944年 10月 リエージュ上空 リエージュは大戦が始まるまでベルギーの領土だったが、今ではドイツが占領している。 そんな地の上空で1機のBf109G(グスタフ)が煙を出しながら、急降下爆撃機〈スツーカ〉のように、急降下を始めた。 それは地面に落ちる前に爆発した。 爆発した機体のパイロットは第103戦闘航空団第Ⅰ飛行隊第3中隊の隊長だ。 隊長がコクピットから脱出したところを見ていない。 第3中隊は1個小隊を欠いた12機で出撃し、戦闘開始からこれで8機が落とされたことになる。 隊長が落とされたところを見ていると、右の主翼から弾が当たる音がした。 背後を確認すると、P51マスタングがいる。 慌てて回避機動をとるが、マスタングはついてくる。 また音がした。 「ホフマン少尉、左の燃料タンクが燃えています!」 左を見ると燃料タンクが燃えているのが見える。 このままだと爆発してしまう。 そんな時、後ろから爆発音が響いた。 背後にいるのはマスタングではなく、僚機のメリ・シュトレーゼマン伍長の駆るBf109Gだ。 どうやら彼女がマスタングを落としたようだ。 「ありがとう、シュトレーゼマン伍長」 「今のうちに脱出してください」 「そうさせてもらうわ」 そう言うと、キャノピーを開けて飛び出した。 そしてパラシュートが開き、無事に着陸した。 「飛行場までは20キロぐらいかしらね」 彼女は飛行場へ歩き始めた。 彼女が飛行場に着いたのは夜遅くになってからのことだ。
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