名ばかりの中隊

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晴天の空を4機のBf109Gが編隊を組んで飛んでいる。 編隊の先頭、1番機から順番に着陸していく。 着陸した4人のパイロットはエプロンにいるリリーたちのもとへ駆け寄った。 「あなたが隊長さん? 私はイルゼ・ディールス。階級は軍曹。よろしくね」 栗色の髪が美しい少女だが、やたらと胸が目につく。 この部隊の中で一番大きいだろう。 リリーは自分の胸と見比べてみるが、差は歴然としている。 いずれ大きくなると自分に言い聞かせて溜飲を下げた。 「アンゲラ・ウーデット一等兵です。よ、よろしくお願いします」 緊張しているアンゲラの容姿は変わっている。 髪は金髪で普通だが、目が違う。 翡翠色の右目に深紅の左目。 いわゆるオッドアイだ。 「私はグレーテル・フォン・ブランデンベルガー。階級は曹長。ユンカー(領主貴族)出身よ。隊長、撃墜スコアを教えて下さるかしら?」 「6機よ」 「エースなのね」 5機以上の撃墜スコアを持つパイロットをエースパイロットと呼ぶ。 「あなたは?」 「5機よ。隊長の記録を超えてみせるわ。平民なんかに負けられないもの」 赤髪黒目のグレーテルの目からは明らかな敵意が感じられる。 「レナーテ・ロンバルト。階級は兵長。よろしく」 抑揚のない淡々とした口調で自己紹介をする黒髪のレナーテ。 コミュニケーションを上手くとれるかどうか不安になってくる。 今度は自分たちの自己紹介をする番だ。 「私はリリー・ホフマン中尉。この子は――」 「メリ・シュトレーゼマン伍長です。よろしくね」 イルゼは元気な声、アンゲラは上擦った声、レナーテは小さな声で返事をしたが、グレーテルはそっぽを向いた。 「扱いやすい、か……」 司令官の言葉を誰にも聞こえない声で言った。 女の子だけというのは嬉しいが、果たしてこれが扱いやすいと言えるのだろうか。 むしろ逆だ。 「この方がやりがいがあるわね」 女子しかいない第103戦闘航空団第Ⅰ飛行隊第3中隊は問題を抱えてのスタートとなった。
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