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「ホフマン中尉、新しいBf109が届きました」
格納庫を歩いていると、整備兵に声をかけられた。
「暖気運転してくれる?」
「わかりました」
「あっ!」
リリーは何かひらめいた。
「第3中隊の他の機体も暖めてもらえる?」
リリーは返事も聞かずにどこかへ駆け出した。
しばらくして、格納庫にはパイロットスーツを着た中隊メンバーが集まった。
「模擬戦をするわよ。とは言っても6人全員でするとなると、編隊がケッテになるからシュトレーゼマン伍長とロンバルト兵長以外が最初に飛ぶことにするわ」
ケッテとは3機1組の編隊のことだが、相互支援に不都合なので、戦闘機ではあまり使われない。
「私の僚機はディールス軍曹に任せるね」
「イルゼでいいよ」
イルゼはタメ口だが、注意はしない。
私自身堅苦しいのが嫌いということもあるが、自分が部下を統率する器ではないことが一番大きい。
だから友達のような感覚で仲良くなって、みんなから信頼されるような隊長になる。
そのことは隊長任命の辞令を受けたときから決めていた。
「イルゼ、よろしく頼むね」
こちらこそ、とイルゼはかわいらしい笑顔で返事をした。
リリー、イルゼ、グレーテル、アンゲラはBf109に乗ろうとした。
「待って下さい!」
先ほどの整備兵に呼び止められた。
「備蓄の問題で、燃料をあまり入れておりませんので」
「わかったわ」
4人はコクピットに乗り込み、滑走路への進入許可を求めた。
許可が降りると、階級の高い順番に滑走路に進入した。
4機は滑走路を飛び立ち、リリーが長機のロッテ(2機1組の編隊)とグレーテルが長機のロッテが配置につく。
両ロッテの配置は同位反航戦を想定したものとなっている。
「有効射程圏内で3秒以上後ろを取ったら撃墜になるから。それでは戦闘開始」
4機がほぼ同時にスロットルレバーを前に倒した。
4機のBf109は加速を始める。
接敵まで900
600
300
100
すれ違った。
「高度を上げて雲に隠れて!」
先に指示を出したのはリリーだ。
指示者自身は操縦桿を右に倒し、右のラダーペダルを踏み込む。
機体が傾いたところで操縦桿を少しずつ引いていく。
ホフマン機は右に旋回した。
対するブランデンベルガー機は操縦桿を手前に引き、機首を上げる。
機体が垂直になったところで、ロールして機体を水平に戻す。
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