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この時点でブランデンベルガー機は進行方向が逆向きになって、ホフマン機を追う態勢となっている。
ウーデット機はスロットルをしぼって減速してから旋回して進行方向を変える。
「イルゼはどこでしょうか?」
アンゲラは周囲を見渡す。
「早速名前で呼ぶのね。ディールス軍曹なら雲の中のはず。私がホフマン中尉を追撃するから、アンゲラは上を警戒してちょうだい」
「ヤー」
ブランデンベルガー機はホフマン機を追う。
「今回は2機いることがわかってるから、あの時と同じ手は食わないよ」
ブランデンベルガー機はホフマン機を20ミリ機関砲の有効射程圏内に捉えた。
しかし、ホフマン機は細かい機動や旋回をすることで、3秒以上後ろを取らせない。
幾度目かの旋回をしたところで、リリーが指示を出した。
「イルゼ、今よ!」
雲の中からディールス機が姿を現した。
「スピード狂のお出ましだ!」
イルゼがホフマン機以外の機体にも聞こえる周波で無線に向かって叫んだ。
そしてスロットルを全開にしてウーデット機に向かって急降下する。
高高度で待機していたため、位置エネルギーが大きく、それが変換された運動エネルギーはもちろん大きい。
その上、フルスロットルのため、最高速度を簡単に超える。
そのような速度ではパイロットにかかるGの負担は大きいが、スピードをどこまでも追い求めるイルゼには問題ない。
この時、アンゲラは2つの考えがあった。
攻撃を回避するか、向かってくるディールス機とすれ違い、旋回して背後を取るか。
アンゲラは後者を選んだ。
前者の場合、標的がウーデット機からブランデンベルガー機に変わる可能性がある。
ウーデット機が回避機動から攻撃に移っている間にブランデンベルガー機が危険にさらされてしまう。
「グレーテルを危険にさらす訳にはいかない」
ウーデット機は機首を上げてディールス機を迎え撃とうとする。
しかし、ディールス機を見据えることができなかった。
「眩しい!」
ディールス機は太陽を背にしていたのだ。
アンゲラが怯んだ隙に、ディールス機が背後を取った。
「1、2、3、アンゲラちゃん撃墜♪」
「こちらウーデット一等兵。撃墜されました」
アンゲラが撃墜されたことを無線で知らせる。
「アンゲラが落とされた! イルゼ・ディールス、覚悟なさい!」
「フルネームじゃなくてもイルゼでいいよ」
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