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私は慌てて表情を和らげた。
私の様子に安心したのか彼女に笑顔が浮かぶ。
その笑顔を見るだけで胸が穏やかな音色を奏でた。
一歩でもこの屋敷を出たらそこは人間の醜い争いばかりだ。
皮肉と偽りの衣を翻(ひるがえ)し、自らの地位を黒く染めあげる世界。
そんなところに彼女を連れ行くつもりも無いが…………。
「エル、こっちに来て」
彼女の白い手が私の手を引いた。
雪のように綺麗な白い肌に紅の唇。
カナリアのような声は私を常に平和の地へと誘ってくれる。
ここは私の汚れを浄化してくれるような場所だった。
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