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「全く、俺は悲しいよ」
そう言って彼はやれやれと言うように首を横に振った。
そのまま、私の横を通り過ぎて屋敷を見上げる彼はさぞかし、私を馬鹿者扱いしているかのようだった。
「出ていってもらおう」
空は青く快晴だが、私の苛立ちは悪天候そのものだった。
にらみをきかせて彼の動きを追う。
「お前はいつから俺にそんな口をきけるようになったんだ?」
「兄君が此処から出ていけばこの口を閉じますよ」
「ふんっ、つまらん奴だな」
彼と私は昔から相容れない仲だった。
貪欲で欲深な彼は人のものでも何でも欲しがった。
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